今年もお世話になりました。 2011
さて、2011年も残す所あと数日です。
今年も本当に沢山の方にご来店頂きました。
ご来店頂いた全ての皆様に、心より御礼申し上げます。
毎年末に同じ感謝の言葉を繰り返すとくどいのですが、結局今年も同じ思いです。
精神的にも経済的にも、皆様のおかげで生きております。
また、今年後半の一時期は土日のピークタイム(15時前後)などに混雑が続いてしまい、ご迷惑をおかけしてしまった期間もありました。
ちょっと珍しいタイプの店なので、雑誌やサイトでの掲載が幾つか重なったりした時期には一時店内が混みあい、若干カフェ寄りの雰囲気になってしまう時がままありますが、でもいつもそれは一過性のものでして、なんだかんだ言っても指向性がマイノリティですので、時期が過ぎると古くからのお客様と同じように感覚の合う少数の新しいお客様だけが残られて、また静かなアール座に戻ってゆくというのがいつものパターンです。
今ではすっかりおさまりましたが、古いお客様には「隠れ家的なアール座が…」と複雑な思いになる方もあったかも知れませんね。
よく「あまり人に教えたくない」「本当に分かる人にだけ教えたい」といったお客様のご意見をお聞きする度にも、僕はとても嬉しく思います。
この店の空気をご理解頂き、大切に思って下さる方ならではのご感想だと思うからです。
僕自身「マニアックなお店」も「全ての人に愛されるお店」も、全く目指してはおりません。
難しい所なのですが、アール座読書館としては、ある種の趣味の人しか入りづらいカフェであってはならないし、気持ちの切り替えや何の引っかかりもなく日常の延長として通り過ぎる普通の喫茶店ではしょうがないとも思っています。
老若男女や趣味を問わず、日常を切ることを必要としている全ての方にとって「最初入りづらいけど、意を決して踏み込んだら自分のための場所だった」というお店でありたいです。
幸いウチの場合はご紹介下さる雑誌やサイトの皆様が店の空気をご理解頂きそれを上手に伝えて下さる方ばかりで、とても助かっております。
指向性の強いお店なので、存続のためにより広い地域の多くの方にその存在を知ってもらう必要もあり、そんな方々には大変な恩恵と感謝も感じております。
「別にこっちは何も言ってないのに、コイツ急に色々言いワケがましくなってどうした?」と思われそうですね。
よく個性的な飲食店が人気が出てからフツーになったと言われるようなケースがありますが、そんな変化をわずかですが感じた時があって、ちょっと色々考えたん時期があったんですね。
こんな小さな店でもポピュラリティがついて来てお客様の層が広がると、ただ欲が出るというのでなく、何だか強力な力でそっち(ポピュラーな飲食店の方 向)に持って行かれる感じがする時があるんです。
マジョリティの威力なのか、それとも経済が持つ力なんでしょうか。
もしかすると人間は群れを作る動物だから、僕のようなひねくれでも、周りに合わせたくなる習性を本能的に持っているということなのかも知れませんね。
まぁ実際ウチなんかはそれ程でもないですが、もっと「今マスコミで話題の…」みたいなレベルになると、きっと独自の路線を行こうとするお店が受ける横風 はかなりスゴいんだろうなぁ、と感じました。
また個人的にも今年は何かにつけて度々ペースが乱れてしまい、私生活でも営業でも不出来なところが多く、振り返るとかなり反省の多い年でした(泣)。
しかし今ではすっかり一時期の混雑は収まりましたし、年を改めるタイミングで気持ちを切り替えてゆくつもりです。
とにかくあのらくがき帳のありがたいお言葉を頂いたからには、何があってもこの方向性と空気感は死守する心持ちですので、古いお客様も新しいお客様も、今後とも今まで同様どうぞよろしくお願い致します。
もちろん絶え間なく通い続けて下さいという話ではないですよ。
時々久しぶりにいらした常連さんが「最近忙しくて、なかなかここに来られなくて…」と、申しワケなさそうに言って下さることもありますが、うちのような
店は疲れた時や何かに迷った時に使われる方も多い場所なので、私生活が充実されていてアール座に行く必要がないという状況ならば、それは何よりなんです。
ふと立ち止まって静かな場所が必要になった時にはアール座読書館がいつでも同じ形でここにあり続けますので、覚えておいて頂けると嬉しいです。
今年日本は不幸な災害に見舞われましたが、東京に住んでいても、それが国民全体の価値観を揺るがすような出来事だったことを感じます。
軽々しく言えることではありませんが、惨劇を超えて人々が社会の実態や足下の生活と幸せに目を向けるような機会に、更にはそれが日本の転機のような形になって行くといいなと思います。
今中国が勢いよく景気を上げておりますが、僕が子供の頃は日本の高度経済成長が成就した位の時期で、日本人はエコノミックアニマルとかワーカホリックとか呼ばれ、世界中から嫌われていました。
時々、もしアール座を高度成長〜バブル期のような時代に開業していたら、果たして相手にしてもらえたろうかと思ったりします。
僕が育って来た「アラフォー」とか呼ばれる世代までの社会では、何においても経済やステイタスが価値の中心になり、人々は快楽と競争にばかり夢中で、身の周りの小さなことや自分が恵まれていることに見向きもしない時代でした。
僕なんかは周囲の人と話や価値観が合うことが基本的になくて、人と考えを理解し合うことをほとんどあきらめていたようなヤツでしたが、僕らより下の世代の人達は、あのアホ騒ぎを冷めた目で見て育ったからでしょうか、こうしたことを理解されている方が比較的多い気がします。
特にアール座のらくがき帳なんか見ると、身近にあるものの美しさ、小さなこと無駄なことの大切さ、自分が幸せを手にしていること、誠実さが人生を好転させることなんかを普通に知っている方が沢山いらして、心が洗われます。
今思えば、昔の自分は本音を出さずに適当に相手に合わせていたから気持ちの合う人に出会えなかったのかなとか、この店は本当の自分で作ったから、そういう人達が来てくれたのかなとか思ったりします。
アール座はもちろん様々な目的にご利用頂いて良い空間ですが、そのコンセプトを考えると「やらなくても良いこと」をして頂くのは個人的にとても嬉しいです。
読書やらくがきや編みもの、折り紙(地球儀の座席にあります)、ただぼーっと魚見たり、ただぼーっとしたりされてる方が店内に多くいらっしゃる時は、なんだかとても安心します。
現代社会を考える時には、社会問題に注目し、憂いと共に批判的に考えないとイケナイような空気が何となくありますが、僕はそんな人々の価値観の変遷を見て、問題点は置いといて、「日本は割とイイ感じになって来てるなぁ」とノンキに感じたりします。
日本全体がこの部屋みたいな空気になれば良いのに、とまで思ってしまいます。
きっと、かくいう私が自身が仕事に追われていたから、そんな気持ちも強くなるのでしょう。
もちろんそんなことのためにはある程度の豊かさが必要なことなので、労働や経済の重要性、高度成長期を支えてくれた人々への感謝も忘れてはいけませんね。
相変わらず僕の妄言は根拠もキリもありませんが、今年は震災や中国バブルを見て、アール座のお客さんを見て、そんなことを考えたりしました。
さて来年はどんな一年になるんでしょうね。
僕は個人的に転機になりそうなので、精力的に行くべきかじっくり進むべきか悩んでいます。
「光陰矢の如し」とか「果報は寝て待て」とか、昔の人達は無責任に色々言うので困りまってしまいますが、どんな形にせよ気持ちを込めた一年にしてゆかなければ、と感じている次第です。
皆様の一年はいかがだったでしょうか?
来年はどんな一年を思い描いておられるのでしょうか?
また来年お店でお会い出来たら嬉しいです。
それでは皆様良いお年を。