秋の虫の音楽会2011とギャラリーのお知らせ

2011.09.10 Saturday 00:32
こんにちは。

次第に暑さも和らいで、ヒグラシの鳴く寂しげな夏の終わりです。
先日まで(初夏から夏にかけて)店内で元気よく鳴いていた去年のJr.の鈴虫達ですが、みな交尾を終え…無事全滅しました。

世間の鈴虫たちと比べると、卵のふ化から全てのタイミングが少し早くなってしまいたみたいですね( ̄_ ̄ i)

室内飼育で季節感がズレてしまったことが大きいのですが、実は彼らには悲しい性(さが)もあって、美しい歌声に引かれて無事にカップルが成立し後尾を終えた後には、そのままメスがオスを補食してしまうんですね。

カマキリのそんな話が有名ですが、きっとそれと同じ様に産卵前のメスがスペシャルな栄養素を取り込むということなのでしょう。

なので鈴虫飼育では、普通タイミングを見てオスとメスを分けたりするのですが、僕はそれよりも来年に向けて元気な卵を産んで欲しいので、オス達には自然の摂理に任せて潔く食われてもらうという方針(つまり分けない)で毎年行かせて頂いております。

結果、8月の後半に鳴き声は止んでしまい、ケースを開けるとメスばかりがワラワラと歩き回っているような状態でした。
何とも勇ましい肉食系女子達です。

オスの最期の一匹とか、普通ならハーレムと言える状態なんですが、彼らの場合はどんな心境になるんでしょうね。
せめて「自分の最期はどの娘に食われよう」という位の選択権はあるんでしょうか。
そんな状態でも、必死に鳴いてメスを呼ぶのだからこちらもスゴい男気です。
命がけの恋ですね。

まぁ全て僕が仕向けたようなもんですが、また来年に向けて丈夫な卵を産んでくれていればと願っております。

そんな訳で、Jr.スズムシ達は結局当初の予想通り例年の「虫の声イベント」シーズンにまではもたなかったので、スズムシ第2陣を新たに仕入れました。

同時におなじみのマツムシ、エンマコオロギも入荷しましたが、今年はそれに加えてさらにカンタンやカネタタキといった種類の虫も加えた豪華バージョンでいこうともくろんでいます。

今(9/9)もうすでに、夜の店内は数種類の虫の声に包まれています。
僕などはかなり幸せな気持ちになりますが、それにしたって秋の虫の声程気持ちを和ませてくれる音色が他にあるでしょうか。

もちろん、沢のせせらぎ、木々の葉擦れの音、森林の雨音など自然界の音には人の心を落ち着かせてくれるものが多くありますが、鑑賞に値する癒しの音色という意味で秋の虫の声に勝るモノはないでしょう。
また、一年の内のほんのひと時しか聞けない、という所もそれに価値を加えていますね。

秋が大好きな僕には、一年の季節の流れを最も実感させてくれるのが晩夏から秋にかけての時節の様に思えます。

その時自分の人生にどんなことが起こっていようとも、それとは全く関わりなく夜空が回り季節が巡ってゆくことは、何だか寂しいような無常観と心安らぐ不思議な安堵感を与えてくれますが、これをより強く感じさせてくれる秋を演出してくれるのが、儚くも優しい虫の声です。

日常を離れ心を休める絶好の季節である秋は、元々それを目的に作られたアール座読書館にとってもベストシーズンと言って良さそうですが、これを色付けるために毎年行っている「虫の声イベント」なんですね。

ちなみに虫の声は、日本ではきっと有史以前から人々の心を和ませて来た秋の風物詩ですが、実はこれを楽しめる(右脳で聞ける)のは日本人と中国人だけで、他の地域の人はあの美しいコオロギの鳴き声もノイズと感じてしまう(左脳で聞く)のだそうです。
感性の違いなのでしょうか、とにかく日本人独特の文化なんですね。

さて、今年で4回目となる「アール座 秋の音楽会」(今名付けた!)にて、素敵な音色を奏でてくれる楽団の小さなミュージシャン達をご紹介しましょう。

言わずもがなのスズムシは、やはり音色が絶品ですね。
誰もが知っている「リイィィィン…」という音色は単体ではもちろん、こうして多くの音色を同時に合わせる時にも、まとめ役として全体を美しく繋いでくれます。

マツムシは、一瞬小鳥かと思うような大きな声で鋭く「ピンッ ピリリッ」と鳴きます。毎年、この子達が断然目立ちますね。
アンサンブル全体を引き締め、緊張感を与えてくれます。

コオロギで最も美しい声と言われるエンマコオロギが発する、見た目に似合わぬ大変柔らかい「ヒョロロロ〜」という声は、僕の大好きな声です。
彼らとスズムシの二重奏が、このオーケストラの骨格になります。
特に今年のコオロギ達は非常に元気が良く、いつもより張りがあるし、数も多いのでサラウンドに配置してみました。

そして今年の目玉は、鳴く虫の女王とも呼ばれるカンタンという虫でしょうか。
虫達はそれぞれに声量が違うので、ケースの置き位置や防音措置などでそれを同レベルにそろえるのですが、今年はこのカンタンの儚げな声をフロントに配置出来たらとも考えています。
「リューリュー…」と、「幽玄を感じさせる音色」とまで言われる侘びの効いた繊細な声をお楽しみ下さい。

また小刻みな声で「キンッ キンッ」とアクセントを加えてくれるカネタタキは、毎年いらして頂いているお客様がご自宅の近所でわざわざ採集して持って来て頂いた、これも今年初登場のありがたい参加者です。
とても神経質な子達で、ずっと鳴き続けてる訳ではありませんが、ノッて来るととてもいい感じで鋭く音を刻んできます。

いずれにせよ今年は種類も多く、音量の調整も悩まされそうですが、きっと素敵な音楽を奏でてくれると思います。
そして彼らが特にノリの良い時間は、例のごとくBGMを切ってしまいます。

ちなみに、彼らが最も力強い音色で夢のような幻想的な音楽を奏でている時間帯は、悲しいかな照明の消えた閉店後なんです。
まぁ、自然の美しさですから人間が都合良く所有出来ないのは当たり前ですね。

皆がフルパワーで演奏出来るのはおそらく9月いっぱい位でしょうか。
やはり日暮れ以降の遅い時間の方が鳴き声は盛んで、日が進むにつれオスが食われて、音の厚みは少しづつ減って行きます(何というオーケストラ…)。

各お座席にはいつも通り、手作りの「虫の声鑑賞ガイドブック」を置いておきます。
種類ごとの解説や、秋の虫に関する日本の古い風習などまとめてありますので、興味のある方はこちらもご覧下さい。

これだけ美しい声の種だけを集めて一緒に聞ける機会というのは、自然環境でもかなり難しいでしょう。
ぜひお茶を飲みながら、ゆっくりと耳を傾けて様々に思いを巡らせて頂けたらと思います。

さて、9月のギャラリーのお知らせです。
秋の展示は彫刻家の春山恵美さんです。

春山恵美 個展
9月13日(火)〜25日(日)  

作家さんブログ→http://d.hatena.ne.jp/haru19870421/

アール座の展示スペースギリギリの大型オブジェやエッチングなど実にインパクトのある作品群は毒々しくも哲学的で、胎児のようで樹木のようで妖怪のようで女体のようで…何というか不思議な生命感の溢れる作品展です。

環境にも人体にも有害とされるFRPをメイン素材に制作された有機的で無機質な物体(生命体?)が、環境と生命の謎にダイナミックに迫ります。
何とも説明しづらいので、とにかくご覧下さい(笑)。
※ご観覧の方にはドリンクのご注文を頂く形になります。

カンタン
category:2011 | by:アール座読書館 | - | - | -

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