アクアリウムの話(水草編)

2009.11.22 Sunday 00:17
オープン前に水槽を設置してから約2年が経ち、ようやく中の世界が安定してきた感じです。
当初から店内には心安らぐ水場と水音が欲しいとの思いから、本格的な水草水槽に初めて挑戦して見ました。始めの内は中々水草も落ち着かず、枯れさせたりしてしまったものもありましたが、ようやく環境に馴染んで来てくれた感じです。
アール座読書館には60cm水槽と90cm水槽が一基づつあります。

60cm水槽には色彩豊かな水草や魚を泳がせて、ちょっと幻想的な光景を演出しております。姿形の様々な水草のジャングルの合間を、カラフルな魚達が小鳥のように飛び回るといった印象風景を目指しています。
普通水槽の魚は、広いスペースを右に左にと泳ぐイメージですが、植物を濃くして内部に立体感を与えると、魚が森の合間を縫うように泳いだり草陰から出入りしたりと、動きが複雑になって面白いです。
お席につくと眼前に迫る位にガラス面が配置されているので、是非、読書や書き物の合間に覗き込んで、この幻想世界を魚達と一緒に泳ぎ回って見て下さい。

普通水草水槽は、この60cm水槽の様に同種の水草をまとめ植えし、前景に丈の低い草を、後ろに行く程背の高い草を色の調和とバランスを考えて配置し、ショーアップされた光景を作るのがセオリーなのですが、ウチの90cmテラリウムの方は少し掟破りな形で、最前面にも背の高い草が生え、全体的に水草が雑多な生え方で、生体の色彩も比較的地味な感じです。
もともと「森の中の読書」をイメージして作った店内空間の中で、このテラリウムが森の泉の様な役割をしてくれたらと言う狙いで設置した水槽なので、イメージとしては自然の泉をまん中で割って、その断面を横から覗いてる様な景観を目指しております。
ショーアップされた水槽の景色は、見る人が主役で、その視点に向かって開かれていますが、こちらはヒト気のない泉の中の世界の方が主役で、ご覧になる方にはそっと息を殺して覗き込んでいるという雰囲気でしょうか。
ただ、その自然な植生の様子を意図的に作る,というのが非常に難しい所で、同種のまとめ植えはもちろん、逆に種類を気にせずただバラバラに植えても、とても不自然な感じになってしまいます。トリミングも、切り揃えてもチグハグにしてもダメ、と言う様な微妙なバランスがあり、雑然と見える自然の世界に流れている、無いようで在るような法則性について考えさせられます。

おそらく、英国式のガーデニングや昔の歌人や禅僧なんかが草庵の庭に作る様な、雑草が生い茂り、一見荒れているようで実は要所要所に手が入っている庭づくりに近いコツがいるのかな、と思っています。
店の書棚にも、かの天才ガーデナー、ターシャ・テューダの楽園の様な庭の写真集がありますが、やはり手を入れる所と抜く所のカン所というか「上手にほったらかす」コツを鋭くつかんでいるように感じます。
ウチではまだあそこまでの景観に到達してはいませんが、持っているイメージは、実際にこの手の水草が自生する熱帯の川底の水景とは違うような気がするので、最近では、陸上の原生林の生え方を参考にした方が良いのかなとも考えています。
水上の植物の方が比較的上手くいっているように見えますが、こちらの方が安定してから時間が経っているからでしょう。とにかく時間をかける事が大事な気がするので、気長に付き合って行こうと思います。

お魚の話もしたかったのですが、長くなってしまったのでまた別の機会にしようと思います。
取り敢えず90cm水槽のお座席のメニュー巻末にはお魚の説明もございますので、気になる方はこちらをどうぞ。

芸術の秋

2009.11.02 Monday 02:48
店内、中央列後部の座席の机上にあるガラスのスクリーンに気付いた方はおられますでしょうか。
実はあれは、絵画作品や写真作品の歴史を鑑賞するための画面なのです。
座席据え置きメニューの巻末にあるマニュアルに沿って操作して頂くと、ルネッサンス〜バロック、新古典、ロマン派、写実、印象派等、西洋絵画史上の代表的な作品、写真創成期からの有名写真家の作品等、総じて1000作以上(多分)の名作が、紙芝居屋さんのフレームをイメージした枠の中に、次々と写し出されるシステムです。

例の如く手作り装置なので、操作に必要な画面上部にある バーが外枠に隠れて見えにくかったりと、少々分かりづらいかもしれませんが、不明な点はお気軽にお訪ね下さい。(^_^;)

美術の変遷を見ていると、時代と共に進歩を続ける表現方法と、決して進歩しない表現力について考えてしまいます。

手法についてはキュビズムや印象派の話なんかが有名ですが、それ以前のどの時代を見ても、アーティストは常に、これまでにない革命的で思いも寄らない新手法をあみ出しつつ、その度、美術の概念を覆しながら可能性を拡げ続けています。美術史を鳥瞰すると、時代と共に様変わりして行く様式の面白さとアーティストの開拓精神に釘付けになります。よく「現代ではもう出尽くした」と言う言葉を耳にしますが、きっとそれを言う人々もいつの時代にもいたのでしょう。

そんな風に芸術は流行りものなので、どの時代にも各々のモードやセンスがあって、それに即してるか否かが同時代の評価には大きく影響する面もありますが、にも関わらず芸術は時が経っても古臭くなりません。
感受性や技術を含む表現力そのものはその人固有の力なので、時代と共には進歩しないからですよね。
素晴らしい躍動感と美しさを備える太古の美術「アルタミラ洞窟壁画」が証明しています。
「古い絵が下手とは限らない」なんて言うと当たり前の話かもしれませんが、力やスピード、知識、解析力等文明や機械、学問の発展につれて様々な能力を得て来た人間が表現力だけは進歩しないと言う事実は、ちょっと面白いですよね。心だけは進歩しないという事なのでしょうか。

美術解説やウンチク的解釈では技法や様式ばかりが注目されますが、芸術の要は表現力ですよね。数百年も昔に遥か異国の見知らぬ人間が、ふとある景色を見て感じた一瞬の繊細な心持ちが、現在の自分にありありと伝わって来ているんだ、と感じると、芸術の凄さを実感して鳥肌が立ちます。
情報化社会と呼ばれている現代でも、こんな微細で確かな伝達方法は芸術をおいて他にないと思います。
古い作品を眺めていると、「どうやったらこの時代にウケるか」と知恵を絞る側面(も必要かも知れませんが)よりも「とにかくこの気持ちを体の外に出したい〜」と言う強い思いの方が遥かに強く人を引きつけるし、そんな作品が時代や商業の粋を飛び出すのではないかと思えてきます。

語ってしまいましたが、お席の絵画鑑賞スクリーンにもごく簡単な解説が入ります。ただ表示時間が5秒ですので、がんばって読み切って下さい。
近代以降の新しい作品は著作権が生きていたりするので自粛していますが、今後古い日本画や東洋美術等の他のジャンルも増やして行けたらと思っています。

書棚にも美術史の書籍や、画集も揃えております。去年話題になった絵画鑑賞の手引書「イメージの森のなかへ」シリーズなんかは一見の価値ありのお勧め書籍ですので、少し腰を据えて絵画史を辿ってみるのも良いかもしれません。
この機会に世界で一番好きな絵を見つけてみてははいかがしょう。

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