人物、性格、生き方色々

2011.04.11 Monday 01:50
いつの間にか春になってましたね。

季節を感じると思うのですが、どんなに都会的な暮らしを続けていても、ふいに体の感覚に気を向けると、すぐにその感度が戻ってきて、ちゃんと体がその季節の食物を欲したりするから人間の体ってえらいですね。

かくいう私の現在の食生活もヒドいものですが、それでも昔から冬には濃い味のホットドリンク、春先にはハーブティー、秋には中国茶を飲みたくなります。

というワケで、春に飲みたくなるフレッシュハーブのミントティー始めました

ハーブティーと言うとドライハーブがイメージされますが、香りも神経作用も瑞々しい生ハーブの威力の比ではないです。

ペパーミント、スペアミント、レモンバームなどの爽やかな香りが気分を落ち着かせつつ、メントールが頭を目覚めさせ集中力を高めます。
抗菌作用、抗ウィルス作用もあり、風邪の予防や花粉症に効果があるそうです。

生ハーブは日持ちしないのでロスの可能性が高くメニューとして出せるか思案していたのですが、是非味わって欲しい爽快感なので、とりあえず実験的に春の期間限定でやってみます(なので、これっきりかもです)。

いつもの春と同じように桜が咲き誇っていますが、近頃は何だか街も人も静かですね。
かつて東京がこれだけ長いこと大人しくなっていた時期というのは、東京育ちの僕にも覚えがありません。

直接的な被害は少ないにせよ、多くの人が精神的もしくは状況の変化など何らかの影響で生活を乱され、気落ちするTV映像を長時間見続けてしまった影響や自粛ムードもあいまって、全体的にひっそりと羽を休めたい心持ちになっているのでしょう。
気分の波がある人が一番敏感になる春の季節でもありますしね。

周囲の空気と自分のバイオリズムが共感してしまう人や恵まれた状況に罪悪感まで感じてウツっぽくなる人、常に抱えていた心労からこれを機に立ち止まってみた人、逆に今こそ自分が何かしなきゃと奮い立つ人もいるでしょう。

ただ、今動き始める人も一旦ここで充電期間を取る人も、これを機に進路変更というか岐路と言うか、今後新たな何かを目指し始めそうな人が、今かなりの割合でいらっしゃるのではないでしょうか。

これだけ大きなアクシデントとその影響が日本全土に及ぶ今回の出来事は、今後この国の方向性に大きな影響を与える、大阪万博や東京オリンピック以来の一大転換期になりそうな気がしてなりません。

大げさかも知れませんが、日本はこれからどこに向かうのかなぁと考えてしまうのは僕だけでしょうか。

とにかく今までひたすら走ってきた日本人には、こうして照明とテンションを落として自分のことや世の中のこととか色々考えてみることは、不謹慎かもですが、絶対に良い機会だし、そうすべきなんだと思います。


所で、先のことを憂いて気落ちするのは人間だけなんだそうです。

将来を絶望視される様なひどい重傷を負った動物園のチンパンジーでも、病院で痛みさえ取り除いてやると、精神的にはすぐに明るくなって、体の不自由とは関係なく飼育員にいたずらをして喜んだりするそうです。

これはチンパンジー(人間以外の動物)は、将来を思い描いて悲観したりする知能がなく、常に今を生きているからですね。
よく大怪我をした野生動物が飢えの中ひたすらうずくまって回復を待ったりする様子に、人間は深刻な精神状態を投影してしまいますが、案外何も考えてないのかも知れませんね。
逆に人間のような心理だったら耐えられない状況なのでしょう。

これを野性的なタフさと言えるかも知れませんが、では人間は弱いばかりなのかと言うとそうでもなくて、未来に希望を見いだして、持っている以上の力と意思を発揮するのも人間にしか出来ない強みなのだそうです。

また別の話では「人間の精神は基本的にはネガティブな傾向が強い」と言う話を聞いたことがあります。
生死の厳しい太古の暮らしにおいては、例えば新しい水場が見つかることと、今使っている水場が干上がることでは問題の深刻さが違います。
考えて行動する人間は、生き残るために有利な「悪い問題を重く捉える方向」に進化したのかも知れません。

災害時にあらゆるデマが広がるのも、TVのコメンテーターが批判的な話ばかりする(それが求められる)のも、週刊誌の中吊り広告についつい目がいくのも、悪い情報に強く注目してしまう人間心理が反映されたものでしょう。

こう見るとポジティブな人とネガティブな人と、生きてゆく上でどちらがトクなんでしょうね。
心理学的には例のごとく「一概に言えない」というような見解が多いようですが、イメージとしては「ポジ=長所/ネガ=短所」と言う認識がありますね。

でも実際に人よりポジティブな考え方をするとバカにされたり反感を買ったりするのも世の常で、特に日本ではネガティブな方に厳しさとか賢さのイメージが付随しているので、特に公の場では「自分なんてまだまだ」とか「油断は禁物」とか、恵まれた点より悪い点に注目する考えの方が現状に甘んじない厳しく賢明な印象を与え、逆に「大丈夫、大丈夫〜」とか言ってると何だかバカっぽく見られてしまいます。

今の社会をどう思うかとインタビューされて「良い社会」なんて答えたら、何だか怒られそうな気がしてしまいます。

それを受けてか、近年の自己啓発系の本ではポジティブに考えることの有効性を唱える内容が非常に多くなってきている気がします。

アール座の蔵書には、うーん、やはりネガティブな匂いの本が多い印象ですね。
僕の趣味なんでしょう。どうしてもそっちに面白さを感じてしまいます。

自宅には体育会系な幕末モノとかもあるのですが、アール座だと浮くので置いてません。

ウチにはいわゆる伝記物は少ないのですが、それでも書棚を探してみると、ネガポジかかわらず結構様々なタイプの人物がいるなぁと思えます。

この所個人的にも、人の考え方と行動、性格と生き方の関連性に興味がわいてしまうので、こんな時期だからというワケでもないですが、アール座に住まう様々なタイプの偉人の生き様に注目しておすすめをピックアップしてみました。

置いてる本の中では「岡本太郎」や「浮谷東次郎」関連なんかが非常に前向きな人物の本です。

今年生誕100年で湧いている太郎さんは僕が若い頃にはアヤシいおじさん扱いで皆に笑われてましたが、きっと時代が早すぎたのでしょう。今や若い世代のカリスマですね。

ひたすら感性を信じる迷いのないストレートな言葉は切実で純粋でぐっと来ますし、読む人を勢いよく引っ張ってくれます。

あれだけ攻撃的なことを言って温かみが感じられるという不思議な人柄は、生まれつき天衣無縫の人かと思ってしまいますが、実は結構思考型でくよくよ悩むことも多かったようで、「岡本太郎は自分で岡本太郎になったのよ」というのが相方の敏子さんの口癖でした。
ネガティブに挑んで裏返したような積極性だからこそ悩める人々を勇気づける力を持つのでしょう。
生まれつきポジティブな人が持っていないタイプの強さですね。

「浮谷東次郎」はあまり知られていませんが、創成期の日本グランプリを賑わしつつ23歳でサーキットに散った伝説のレーシングドライバーで、その手記や記録が出版されています。

とはいえ、影のあるカリスマキャラからはほど遠い坊主頭に丸眼鏡の若者で、ものおじしない大変に奔放で前向きな性格と日本人離れした行動直結型の性格と、生き方を写したようなダイナミックな走りで人気を博した非常に魅力的な人物、それこそ天衣無縫の人です。

破天荒な行動型なら「南方熊楠」なども面白いです。
天性の研究者に特有の常軌を逸した集中力と行動力ゆえ、ひたすら関心のあることに向かうあまり行動が世間的な枠から大きく外れてしまうタイプの人で、普通に居たらアタマのオカしい男なのですが、水木しげるの伝記漫画ではその辺がよく表現されています。

意図的に破天荒に振る舞った人としては、伝説の坊主「一休和尚」がいます。
酒を呑み女遊びにふけりお地蔵さんに小便かけるめちゃくちゃな宗教姿勢は形骸化した寺社会や時代悪を批判する「偽悪」的な態度だったと言われています。

とんち小僧的なアニメの一休さんをイメージして読むと、かなりショックを受けますが…。

こうした人達の魅力は、何といっても、社会的な常識をへとも思っていない爽やかさに尽きると思いますが、その流れで、もう少し呑気なマイペース型には俳人「山頭火」や書が有名な禅僧「良寛」などがいます。 

俳句人は、とにかく気構えを解いて、精神を風のように自然に遊ばせるのが大変得意な人達です。
自分の考えやこだわりから解放されもう何もいらない羨ましい人、というイメージがありますが、山頭火の句と一緒に手記を読むと、なかなか自分の中の色々なものとも戦っていて、ぜんぜん人間臭く面白いです。

我が敬愛する良寛さんは呑気マイペース型の内気なタイプの人です。
おっちょこちょいでトボケたお爺さんなのですが、不世出の書の達人で、盗るものもない貧しい住まいに空き巣が入ったおりには、寝たフリしながら寝返りを打って体に巻いていた毛布を持っていかせた、という逸話を持つかなり超越的な人物です。

この人を「トボケたふるまいでみなに笑い者にされつつ本当の思慮深さを隠している」と見るのが研究者による一般的な見解ですが、どうも僕には、ただバカのフリをしているのではなく、悟った末に本当の天然キャラに辿り着いている人の様に思えてなりません。

この方面に来ると、つげ義春の「無能の人」に登場する、とにかく自分の存在をなきがごときにトボトボ生きる「井月」なる俳人も気になります。

仏教の悟った人物は、あらゆる能動的な働きかけを止めて自分を無為の方向に持っていこうとしたりするので、一般にはちょっと理解しづらいかも知れません。
ネガ、ポジで言ったらネガティブの極みで、先の岡本や浮谷の対極に位置する生き方ですね。

こうした禅的思想の基になっているのは中国の「老子」や「荘子」の「道」という考え方ですが、乱暴に言うと、議論や思考、判断をやめ、感覚のままに自然と一体化し、欲を捨て、争わず、とにかく努力や頑張りをやめ、役に立たず、人に見下され、空気のような存在でいなさいというような教え(ちょっと雑かな?)で、もはやネガティブをも超越しています。

老子と言うと、岩山の上に一人霞を食って暮らす仙人のイメージですが、実際には人間社会の中での在り方について理念を語っています。

が、ここまで来ると、努力を惜しまず自己実現をはかること、善悪をはっきり見極めることこそを美徳とする現代社会には、到底受け入れがたい思想に思えます。

昔の宮崎アニメの主人公(ナウシカやアシタカ/個人的に好きなキャラ達ですが)のような、勇敢で利発で逞しくて心優しい、欠点の見当たらないような前向きな人間性こそ、社会が理想とする立派な人間像でした(ラピュタのシータなんて小学生位で牧場経営したりしててビビります)。

所が近年この「道」の思想を分かりやすく砕いた、加島祥三の「求めない」がベストセラーになったのには正直驚きました。
一筋縄じゃないんですね、世の中は。
ひたすら豊かさを目指し続けて、来る所まで来た今の時代こそ、こうした思想が見直されるべきタイミングなのかも知れません。
確かに意味を理解すれば、こんな今こそ強烈なパンチ力を持つ思想でしょう。

「ダライラマ」も意志が強く利発で勤勉で心優しいナウシカのような人ですが、それにも増して、悲劇的な境遇を生き抜くその明るさが特筆すべき人だと思います。
数奇な運命の偉人としては珍しく、まだ生きてますね。

仏教とキリスト教が折衷された「宮沢賢治」はどうでしょう。
僕は子供の頃「雨ニモ負ケズ…」なんて、説教くさい感じで嫌でしたが、大人になってから読み返して、その美しさが染みました。

「皆の幸いのためならこの身を百ぺん焼かれても…」とか、人々に対する自己犠牲をこれほど切に願い、ここまで堂々と主張した人は珍しいですが、この人の思想の源はきっと思考よりも繊細な感受性だと思います。
だからこそ、文学にも生きる姿勢にも森の中のような清涼感があり、下手な思想文学とは一線を画した正直さがあります。

あと著名な人ではありませんが、アイヌに伝承される産婆術、イコインカルクルという職の最期の継承者と言われたおばあちゃんの大変興味深いインタビュー記録「ウパシクマ」という本があります。

アイヌ古来の役職で、自然と通じ、伝承技術と霊的な力でもって産婆から医者、薬剤師、占師、巫女のような仕事まで併せ持つ、まるで梨木果歩の「西の魔女…」に出て来る魔女みたいな感じの職業とその不思議な療法についての話が中心です。

ちょっとスネた田舎の婆ちゃんみたいなキャラですが、自然分娩で500人を超える助産を一例の失敗もなく取り上げた名助産婦で、自然に対してとても誠実に生きていた日本古代人の姿を垣間見れるような貴重な存在の人です(H7年没)。
現代文明に迷うことなく、強い精神性と豊かな感性で自然や神と語りながら経験主義的に現代を生き抜いた姿勢を伺わせます。

サイゴに、最近入荷した「空飛ぶ機械にかけた男達」という本ですが、飛行を夢見た多くの挑戦者達の話です。

これまた「道」の対極的な生き方ですが、自分の直感を信じ、周囲にバカにされながら(ココが要です。周囲の理解を超えた所で生きてるんです)もひたすら何かを作り続ける人が僕は大好きでして、近代の有人飛行を目指した人達はその象徴的な存在です。

こうした仕事は、とても出来そうにないとも思えることを「絶対出来るはずだ」と信じなければ出来ないワケで、ポジティブの極みと言えましょう。

古い科学を元にしているし、結局その理論では飛べなかったことを知っている我々が読むと、ついつい稚拙な理論と思って面白く読んでしまいますが、考えたらこの人達全員の夢の様な思いは結局実現するんですよね。
彼らの努力と積み上げてくれた理論の蓄積のおかげで、我々は海外に旅したり外国の旨いもの食べたり出来るんです。

アール座の天井に飾られている、ライト兄弟に勇気を与えたその先人、オットー・リリエンタールの飛行機模型と、その後に兄弟が飛ばしたライトフライヤーの模型には、そんな敬意も込められています。

さて、思いつきで始めた今月のオススメなので何だかジャンルもバラバラで、脈絡というものがありませんが、まぁ例のごとく並べておきます。
気になるものがあったら見て下さいね。

こうした本を読んだり、TVで「プロフェッショナル」とか見たりすると、僕はすぐ「あーもう決めた。オレ今日からこういう風に生きよう」などと容易く感化されてしまいますが、こうして様々な生き方を並べてみると、「どれにするんだよ」と迫られているようで、あまり無責任な決意もしづらくなります。

でもまぁいいや。おっきくなったら考えよう。
category:2011 | by:アール座読書館 | - | - | -

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