心理学の勧め2 〜性格形成とインナーチャイルド〜

2011.03.02 Wednesday 01:16
春までもう一息という所ですが、そんな今頃になって店内のシルクジャスミンがまた実をつけました。
室内栽培なので季節感がかなりとんちんかんなことになっていますが、それでもやっぱり嬉しいです。

去年一つだけ実がなった時にもブログでご報告したのですが、その時「蝶も蜂もいない室内で実がなるのはきっと閉店後に光合成ライトの下に鉢を集める際に、偶然花同士が触れて受粉したんじゃないか」という勝手な推測を立て、それ以降花が咲く時期には鉢を集める度に花のついた枝を無理矢理引っ張って来て他の花と強引にチュッチュとくっつけてました。

非常に乱暴な人工授粉ですが、そしたら今年なった実は何と6つ。やった。

一番見やすいのは窓際前から4番目の席(ベタがいるとこ)の木の先端にまとめて3つなっている部分でしょうか。
その木に他に2つ、前から2番目の席の木にも一つ見つかっております。

最初は緑色の小さなレモンの様な実がなるのですが、これが熟して段々と赤くなって来ると、サクランボのようでとても可愛らしいんです。
「柑橘系植物なので甘い味がするらしいっすよ」とのお客様からのタレ込み情報もありましたので、この春には検証してみようかと思っております。

さてさて、今月のおすすめ図書も前回に引き続き心理学関係です。

先月は性格分類についてたらたらと綴りましたが、そんな風に自分がどんな奴なのかを考えていると、次には「ならどうして自分はそんな奴になったんだろう」という疑問にぶつかってゆきます。
心理学はこの性格形成についての研究を軸に発展して来たと言っても良いでしょう。

これには先ず「自分がこんなんなのは生まれつきなのか育ち方のせいか」という疑問が根本的にありますが、心理学においてこの「生まれもっての気質と後天的に得られる性質はどちらが優勢か」という問題は非常に難しく、昔から「生得説」「経験説」として意見が分かれるそうです。
ただ常識的に「両者が影響し合って形作られる」と考えられていて「どちらか一方によって決定される」と言う見解は今はあまりないようです。

心理学で「気質」というと、生まれつき備わっている性格的要素のことで、つまり遺伝で決定される部分になりますね。
よく「こんな所は母親譲り」とか「おばあちゃんの若い時にそっくりだ」とか言われる話ですよね。

この店の内装をやっていた時、叔父に「利助はんのやり方によう似とる」と言われました。
「利助はん」は父方4代前のご先祖(ひいひいお爺さん)で、行商で材料費を稼ぎ本家の家屋をセルフビルドした時の話が一族の間に言い伝わっています。
姿も知らない嘉永時代の人物の個性が自分の中に脈打っていると聞かされると、DNA情報の不思議なつながりを感じてしまいます。

ちなみに仏教では「前世」の因縁が「カルマ」として生まれつきの性格(気質)まで形作ると考えられていて、最近は占いなんかでもこんな話をよく耳にしますよね。

僕はアンティークショップなんかで絶対に自分が知らない時代の高価な品に強烈な懐かしさを感じたりすると、すぐに「オレの前世はドイツの貴族だな」とか思って一人うなずいたりしてます。
また、旅先の風景や建物を見てそんな感覚を抱く度に「ホームレスかな」とか「坊主に違いない」とか思います。

そんな経験や根強い趣味、好き嫌い、覚えのないトラウマレベルの恐怖感や執着心なども合わせて総合的にプロファイルしてみると、どうやら僕の前世は、明治か大正時代の比較的高貴な家柄の大きな庭と池のある洋館造りの家に生まれ、不自由なく育つも、自己顕示の強い社交会になじめず、ノイローゼになって逃げるように出家し、大きな寺に入るが政治の渦巻く寺社会にも馴染めず、結局人里近くの山中の湖が見渡せる草庵に一人暮らして悟りを求めた禅僧で、晩年は町で物乞いや拾い物をしながら自然の風景を見ては絵を描いたり詩を詠んだりして気ままに暮らし、最後は桜が咲く頃に伝染病に蝕まれて寂しく亡くなったという逃避型の人物だったようです。

ちなみに僕には霊感の類いは全くありませんが、この手の話は言ったもん勝ちで、誰にも迷惑はかかりませんので、ヒマな人はやってみると楽しいです。
ただ、人格を疑われるのであまり人に話さない方が良いです(ブログに書くなどもっての他です)。

後天的に得られる面に関しては、手がかりが自分の記憶に残っていたりするので考えやすいですよね。
家族構成やその第何子であるかとか親の教育方針の影響なんかは分かりやすい所でしょうか。

僕も昔よく「年の離れた姉が二人いる末っ子」というと、女の子に「あぁ〜、ぽいぽい」とか言われてカチンと来たりしてましたが、とはいえこの影響はどうあがいても否定出来ません。

特に性格は幼い時期の条件程影響力が大きいとする見方が強いようで、幼児期(6歳くらいまで)にはほぼ決まってしまうという話もある位なので、家庭環境は絶対的なのでしょう。

おそらくそれより後は、考え方や趣味や価値観の話になって来るのではないでしょうか。
自分が周囲からどう評価されて来たかが自我意識や対人態度を、何で評価されて来たかがその趣味や価値観に影響するようにも思えます。

逆に、幼い頃の記憶にも残らない様な出来事が本人の知らない内に今の精神に影響を与えている、という「抑圧された無意識」の存在に注目したのが、有名なフロイトの精神分析学ですね。
後に批判もされた点も多いですが、心理学を飛躍的に進歩させました。
夢とか潜在意識とか、我々が心理学というジャンルに持っている何となく非現実的で神秘的なイメージは、この学派がもたらしたものでしょう。

こうした潜在的な性格形成について、もっと進めると「インナーチャイルド」と言う概念が出てきます。
簡単に言うと、成人の心の奥に存在する幼児期の人格が傷ついていることが、その精神や行動に様々な問題を生じさせるとする考え方ですが、この話も大変興味深い所です。

ハワイのヒーリング技術「ホ・オポノポノ」はもう少しスピリチュアルに寄った思想で、前世や霊感的な話にまで広がりますが、やはり意識の奥にある幼児の人格とその癒しを支柱とする思想です。

全く分野の違う2つの思想が共通して、大人の精神の中核にある傷ついた子供の人格をケアする事の重要性を解いているのは興味深いですね。
基本的にはどちらも、子供時代の人格がその頃のまんま今でも心の奥に閉じ込められているという考え方をします。

大人は理性的にモノを考え、正しい理念やモラルに基づいてその行動や言動を選択しているフリをしますが、本当は、感情と欲と立場と都合の駆け引きで選んだ行動に、理性でそれらしく体裁を整えているだけの様に思えることもしばしばですよね。

僕も、根源的に人は子供の心が先にものを考えていると思っています。
子供時代の人格が少しづつ大人のそれに変化して行くのではなく、きっとその欲求や感情は昔のままそこにあって、それを抑制する殻を上から何重にも被せていったのが大人の精神状態なんじゃないでしょうか。

ばりっとスーツを着た知性的なビジネスマンやOLさんだって、もし許されるのならダダをこねる子供のようにオフィスの床に仰向けに寝転がって「だあぁぁー!うああぁー!」と泣き叫びたい時はあると思います。
それをやると後々さらに面倒なことになるのを知っているからやらない様になっているだけで、それはつまり感情を抑さえ込むことが出来る様になっているのであって、抑さえ込まれる感情自体はきっと成長なんかしてません。

誰にでもあったあどけない子供時代の人格が、今もその人の心のセンターにちんまりと座っていて、人間関係やら社会的プレッシャーやら、大人レベルの様々なストレスに傷つけられているとしたらと思うと、ちょっといたたまれないですよね。

これを本当に実感したのが昨年の出来事で、ちょっと重い話題で恐縮なのですが、姉を病気で亡くしまして、その最後の一日の話です。

会社を経営し、バリバリ仕事をこなしてきた聡明な姉は、病床でも誰よりもしっかりしていたのですが、最後の日だけは少し意識がとんで、意識障害のような状態になっていました。
かなり年が離れているため姉の幼少時代など何も知らない僕ですが、小さな子供の様な言葉を発してベッドの上でむずがる様子や訴えかける目を見て、これは姉の幼い頃の人格だと直感しました。

幾重にも被っていた理性的な意識が薄れて、中核にあるそれが現れたのでしょうか。
その時は悲しいよりも、普通は会えるはずのない幼い頃の姉に出会えてちょっと感動した位なのですが、今思うとやはり複雑な気持ちにもなります。

非常に厳しい状況下で会社を経営しつつも、いつも人のことばかり考えていた彼女は、立場上かなりの過労に加えて尋常ではないストレスを長期間抱えていた(病気発症の引き金にもなりました)はずなのですが、それをこんなに無邪気な人格が一番底で受け止めていたのかと思うと心が痛みます。

でも程度の差はあれ、現代人は大抵皆こんな状況にありますよね。

自分を厳しく責めるのが立派な姿勢とされている社会で、我々は心の中に自らを責める社会的な意識を強く作り上げるように教育されます。
もちろんこれは必要なことなのですが、社会から個人にかかるプレッシャーが尋常じゃなく強くなっている現代は、比例するように心の傷つき方が深くなっている気がします。

店のおすすめコーナーにある「インナーチャイルド」は成人が受ける傷についての本ではありません(幼い頃に受けた心の傷がテーマ)が、読み進めて行くと、この「責められる方の自分」がインナーチャイルドにあたる気がしてなりません。

誰でも、周囲の圧迫感から身を守るように自分を責めたり、辛さから逃れようと自分を否定てしまうことがあると思いますが、人格形成や心理療法の本を読むと、本当は世界中に反感を持たれても、自分の意識だけはインナーチャイルドの側に立っていてあげないといけないのかなと思えてきます。
精神が社会的な意識ばかりに捕われてしまうと、どうも殺伐としてしまいます。

もちろん姉はそう言う人ではありませんでしたよ。
重い役職と多忙な生活の中でも常に感受性を開き続け、道端の植物とか小さな出来事をきちんと見つけて誰よりも楽しめる、スゴい人でした。

「インナーチャイルド」は多少心理療法よりの本なので、症例なども病理的側面が強く、あまり一般的な話ではありません。
専門家によっては「潜在意識は意識されない方が良いから潜在しているのであって、むやみに引っ張り出すべきではない」とする人もいるので、この本の催眠療法的な手法は「シロウトが簡単にやって良いのかな?」と思える所もちょっとありますが、インナーチャイルド的な心理構造や過去に起きた全てのことが今の自分を形作っているという事実を十分に理解させてくれます。

「インナーチャイルド」の他にも、店内のおすすめ書籍コーナーには今回触れた「性格はいかにしてつくられるか」「精神分析入門」、前回の性格分類に関する本やアイデンティティーに関する本が並んでいます。

心身のバランスを崩しやすい春先ですが、あえて精神の成り立ちを理解しつつ自分の意識下を探ってみるのはいかがでしょうか。
もちろん本気で不安定な人はやめときましょうね。


category:2011 | by:アール座読書館 | - | - | -

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