空き地の思い出

2013.02.18 Monday 00:03
 北陸地方では春一番とか言ってますが、まだまだぜんぜん寒いですね。

もう2月も後半です。


あ、そうだ…


皆様明けましておめでとうございます。


はい、もう相変わらずですね。
もう毎年のことなので言い訳はしません。


アール座ブログの新年は旧正月(今年は2/10)なんです。


こんなことばかり言ってると呆れられてしまうので、話を変えてしまいましょう。


唐突ですが、今日は空き地のお話でもしてみます。


先日、実家(都内の近所ですが)に用があって帰ったおり、駅から家まで向かう途中でふと「子供の頃この路地の奥に面白い空き地があったなぁ」と思い出し、ついつい今はどうなってるのかとのぞいてみたくなったんです。


昔とのギャップを楽しもうと古い記憶のイメージを起ち上げつつ路地の突き当たりまで入ってみますと、あろうことかその空き地が古い記憶そのまんまの姿でどーんと現れ、僕はあっけに取られてしまいました。

もう町全体が様変わりして古い建物すら見当たらず、今でもあちこちで建設工事が続く杉並の住宅地で、30年前のままにそれが残っているというのは、実際シーラカンスばりに奇跡的な出来事なんですが…あるもんなんですね。


ただ、悲しいかな僕自身の感性の方は変わってしまったのか、そこに昔あったような不可思議な雰囲気はあまり漂っていませんでした。


こんなだったかなぁと思う程、どうにもただの空き地なんです。


目線が変わってしまったのか周囲の空気が昔と違うのか。


まぁでも、そんなもんですよね。こればっかりは仕方ないのでしょう。


だってスゴかったんです、子供の頃に感じた空き地の濃い〜い空気。

それにしてもイイ年をしてこんな風に幻想的な空間を求めてしまったり、そんな空気を目指したような店を営んでいると、この日常と違うファンタジックな空気を味わうことは何だか自分の一生のテーマのように思えてきます。


そういえば幼い時分から僕はそんな気持ちになる時間がとても好きでした。


子供の頃は初夏の夕立の前後とかに外の空気が濃い黄色になる時(分かります?)とか何だか記憶の中にいるみたいでとてもワクワクしたのを覚えています。


見知らぬ住宅地の迷路のような路地に迷うと、必ず「この路地を抜けたら、きっと別の世界に出てしまうな」と、ため息をついて空をにらみつけていましたし、耳鳴りなんかは宇宙人からの交信だと固く信じていたので、いつも鳴り出した途端に周囲の現実感は遠のいて、僕は怯えながらも必死に解読と返信を試みておりました。


なかなかイカした少年でした。


そんな僕がファンタジックな空気を自ら感じたいと思った時に決まって忍び込んだのが、近所の空き地や空き家となった人の住居跡でした。


昔は東京にも所有者が事実上使用していない土地というものがあちこちにあって、住宅地にもよく、柵があるでもなく開放されるでもなく放置され、木々や雑草が生い茂ってしまっている一角が点在していましたが、野山のない都会でこんな場所は当然のように子供達のワンダーランドになっていました。


例の近所の空き地こそ奇跡的に残っていましたが、やはり最近は遊んでいる土地というものをすっかり見かけなくなりましたね。


僕はアール座を始める前にお弁当の移動販売をしていた時期があり、よく都内で軽自動車が一時停車出来るようなスペースを探して回っていたのですが、現代の都会には何のためでもない土地というものが本当にないことに驚かされました。


特に地価の高い人が集まるような地域では全ての区画に必ず何らかの社会的経済的な存在理由があって、そんな人々の利権がパズルのように隙間なく詰め合わされている地域が都市の姿なんだという印象を持ちました。


まぁそれはいいですが、とにかく子供時代には空き地や空き家が珍しくなかったので、そんな空気を楽しめる友達と連れ立ったり一人で行ったりして、幻想的で魅力的な時間を日がな一日過ごしたりしておりました。


ちなみに僕が言う空き地というのはドラえもんに出て来るような土管の置いてある開けた広場ではなく、大抵通りから奥まった場所にあり、おそらくかつては住宅であったろう塀に囲われた区画に雑草や樹木が生い茂る暗い森のような一角です。


そういう場所は法的には誰かの土地であっても、すでに本当の主は人間ではなく動植物や怪し気な空気が支配している世界なので、よそ者である人間(子供達)は自然と息を殺しつつそこの空気を壊さぬようこっそりと忍び込むように侵入します(まぁ社会的にも不法侵入なのですが…)。


すると薄暗いその空間にはいつでも独特の濃い空気が漂っていて、踏み入るだけで日常を軽く消し去る強力な地場があり、流れる時間も外とは全く違うように感じられました。


朽ちた家屋が残っていたり更地だったりもしますが、とにかく全てが植物に覆われています。


緑が深く生き物の匂いも濃くて、周囲の環境から独立してその区画の中だけで生態系が完成してるんじゃないかと思わせるような存在感がありました。


人の手が入る庭園と違って様々な雑草がはびこり、多様な種の草木がそれぞれの植生層に従って住み分けをし、まるで小さな原生林のような自然環境が出来ているので、都会にしては昆虫や動物の種類も多く、ぼーっとしていると突然落ち葉の山がガサガサと動いたり、ふいに間近で猫とヘビが戦いはじめたりと、スリリングな事件にも事欠かない所でした。


時には隣町の入りくんだ場所にこつ然と現れ(?)一度行ったきり二度と見つけられなかったような、今となってはもう幻だったとしか思えない強烈な雰囲気の名スポットに出くわすこともありました(花が咲き乱れ蝶が飛び交う夢のような草っぱらでした)。


ただ本物の野山と違うのはそういう場所には必ずかつて長いこと人が住んでいた気配というものも残っていて、その人口の跡地に自然がはびこっているという雰囲気が僕にとってのツボで、そこにはもちろん恐怖心もあるのですが、それを凌ぐ不思議な魅力が満ちているんです。


この微妙な感覚に共感してくれる方がどれ程おられるのか分かりませんが、例えば地面に割れた食器やかつて家財道具だったものの残骸が雑草の中に静かにころがっていたりする、普通なら気味悪く思えるような様子が子供心に不思議と気持ちを落ち着かせてくれたのを覚えています。


そういえば以前テレビで、学者、専門家の研究に基づいて「もし今人類が滅びてしまったらその後の地球はどうなるか」というテーマで人が居なくなった後の世界をシュミレーションしてゆくようなドキュメント番組をやっていたのですが、結論を言ってしまうと「人が居なくなればあっという間(確か数十年かそこら)に今失われた自然は回復し、高層ビル街はジャングルに没してしまう」という結末が、ツタだらけの廃墟となったビルの中を悠々とトラが歩いている映像とともに語られていました。


当然番組は人間目線で作られているので、自分たちが滅びてしまうこのオチは殺伐としたニュアンスで演出されているのですが、ぼくはこれを見た時どうしてか「なぁんだ、よかった」というような深い安堵感を感じ、ツタに覆われた無人のビル街のCG映像に何とも言えない親しみを感じてしまったのを覚えています。


見方によってはニヒリストのようなヤツですが、森に呑み込まれた無人のビル街が、今現実の乾燥した西新宿よりも落ち着いてしまう感受性を持つ人はきっと僕だけじゃない気がします。


その手の廃墟は文明が滅んだ後の世界が舞台の未来フィクションにもよく穏やかな描写で出て来ますね。


名作絵本の「かいじゅうたちのいるところ」で僕が一番興奮するのは怪獣島のシーンではなくその導入部、主人公のマックス少年が部屋の中でうとうとし始めると夢と現実の境がおぼろげになり、床からにょきにょきと樹が生えて来て部屋の中がジャングルと化してしまうというくだりです。


以前廃墟の写真集なんかが流行った時期がありましたが、ああいったかつての人間社会の興隆が廃れて再び自然に帰してゆくような様を好んで見ていた人達も、きっと不気味さと共に不思議な安堵感を感じていたのではないかと思えるんです。


子供の頃、とある空き家の居間で床下から畳を突き破って生えて来た樹木
が天井まで貫いている様を見ていた時、そんな感覚でドキドキと共に心安らぐ心持ちに包まれていたのを思い出します。


もともと生態系を支えたりリードしたり出来るような存在ではない人間は、きっとそれを積極的に作ってゆく植物や微生物達の傘の下で生きて行くという意識でいるのが一番幸せなんじゃないでしょうか。


ぐるりを緑に支配され大自然に主導権を取られたまま、枝をかき分け根っこにつまずきながらも結局はその力に守られて生きていた太古の暮らしの記憶が、我々の心の奥に心地良く残っている気がします。


廃墟のコンクリート壁を木々が力強く砕きつつ人工的な住環境が自然に乗っ取られてゆく様は、そんな意識につながる安堵感をイメージさせていたのかも知れませんね。


さて今回はなぜこんな話で興奮しているのかというと、実はこんな幼い頃の体験こそが今ウチの3階に誕生しつつある空間が目指すイメージのひな形になっている気がしてしょうがないからなんです。


空き地のような、屋内の中庭のような空間を思い描いてます。


題して「エセルの中庭」。


ファンタジー小説のタイトルではありませんよ。

何を隠そう3階に出来た新店舗の店名です。


ヘンな名前でしょ。


違和感と何のこっちゃ感が残るかもですが、大丈夫です。

すぐ馴染みます。


詳しいコンセプトについては追々お話しさせて頂きますが、まぁざっくり言うならやっぱり「中庭のような空間」ということなんです。


現状はまだそのベースになる洋館風の内装が形になっただけで、植物はまだ数種類の樹木を試験的に植えてあるだけの状態なのですが、いずれはここに枝葉や蔦がはびこり支配するような空間を見据えています。


ただ、緑が茂るにはもっともっと時間をかけなければいけないので、そういう意味で本当の完成は数年後なのですが、目指すは古い洋館作りの室内が放置され、そこに観葉植物や外の庭木が入り込み、ツタや枝葉が所狭しと広がり収拾がつかなくなってしまったかのような空間です。


どうか、あと数年待って下さい


で、肝心の営業の方ですが、2月から仮営業のような形で不定期にですが何とか時々開けております。


メニューもロクにそろわずドリンク5種類程度のイベントメニューのような形で、時々しかも夜のみ営業というていたらくなのですが、これでもようやっとです。


長いことお待たせしていた皆様には、予定が大幅に遅れてしまったことをお侘び申し上げます。m(_ _)m


これからフードメニューなんかも増やして、連日営業を目指して参ります。

今の所営業は開けられる日は大抵6時〜9時過ぎ位までで、アール座にお電話頂ければその日の予定なら何とかお答え出来るかという感じです。


通りがかりの際に開いてたら「あ、やってる」なんて感じでお立ち寄り下さい。


ごめんなさいね、こんな形で。


イイワケがましいのですが、何だか運命の神様に「まだ開店しちゃダメ」とストップかけられてでもいるかのように、計画にも私生活にも次々と出来事が立ちふさがりどんどん事情が変わってゆくんです(泣)。


でもがんばる。


どうか一つ、長〜い目で見て下さい(by小松政夫)→え?ウソ!知らない?!(汗)



近所の空き地。もっと鬱蒼として4倍位広かった気がする…。

category:2013 | by:アール座読書館 | - | - | -

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2017.12.16 Saturday 00:03
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