冬の空気とまどみちお

2012.02.04 Saturday 00:27
 「皆様、明けましておめでとうございます」…ってもう2月ですね…って、去年もこれやりましたね。

ただでさえのろま更新の上にこの所少々バタついてしまい、こんな時期に新年のご挨拶ですが、本年も変わらぬおつきあいをどうぞよろしくお願い致します。

相変わらずヒドい時節感覚ですが、外はしっかりと冬ですね。
何か今年の冬はちゃんと寒いです。
東京にも乾いた冷たい風が吹いて雪もちらついたりして、冬っぽい感じです。

冬場はいつも朝(昼近くですが)シャッターを開けて店に入ると、暗い室内で空気がヒンヤリと気持ち良いです。

全国的には色々と大変なことも多い寒波の冬ですが、良い所を上げるなら、水道水や空気が冷たいというのは個人的に冬の好きな所です。

冷たい水や空気って、きれいに澄んでいて、静かで落ち着いた感じがします。
温度が低いというのは物理的にも分子の活動(振動)が静まっているということだし、低温の空気中では微生物の活動だって控え目になります。

もしかしたら人間の感覚ってそんな所まで感じとっているのかも、とか思ってしまいます。

だから寒い日は静かな物音に耳をすませたりするには良いですね。

僕がアール座のテーマ曲と勝手に思っているエリック・サティのジムノペディがBGMのレパートリーに入っておりまして、お好きな方もとても多い名作かと思いますが、開店前のまだ冷たい空気の中でこれをかけるとなかなかハマります。

音数の少ない神秘的な旋律の中では全てのことが意味を失い、開店作業中にも関わらず、店おっぽり出してこのまま旅に出ようか、とかいう気になっちゃいます。

まぁ出る度胸はありませんが、様々な迷いごとや情報が心を離れて、何だか気持ちがスッキリとします。

ずっとそんなシンプルな心境で生きていけたらいいなぁと思います。
こうした冬の静かな空気の中にいると、日頃自分がどれだけムダな情報や知識に振り回されて暮らしているか気づきますね。

読書室を営業し、ブログまで書いておいてこんなこと言うのもなんですが、思えば我々現代人はただでさえアタマの中に多くの悩みを持っている上に、TVやネット、書物や人とのコミュニケーションから侵入して来る、ちょっと異常な量の情報に囲まれて生きているんですね。

特に人の神経を引こうとする新しい情報には感情をあおるものが多く、中毒性もあって、心の中をザワつかせるばかりです。

冬の朝にサティとか聞いてると、読書好きの僕ですら「モノを知る」ということが、何だかロクでもないことのように思えて来ます。

そんな気分の時は情報収集や他人とのコミュニケーションを一時シャットアウトして、一人の時間を作ってゆっくりと辺りを見渡してみると、なかなか素晴らしいことが起こります。

大昔から普通に周りにある物事が、流布している奇抜な情報に覆い隠されていたことが見えてくるんですね。

豊かな空気があり、透明な水があり、日の光が射し、路端に草が生えていて、美味しい食べ物と衣服、夜眠れる場所があり、それを知る感覚があり、それを感じる心があって…と、数え上げたらきりがない恵みにじぶんが囲まれていて「もうこれ以上何もいらないし、何も知らなくていいな」という気分になったりします。

大抵僕のこんな気分はいつもただの気まぐれで、すぐにまた色々欲しくなるに決まっているのですが、恵みに囲まれていることをちゃんと見続けることが出来れば(境遇によっては簡単なことではありませんが)、きっと人はどんな状況の中でも幸せになれるんじゃないかと思えて来ます。

それが出来なければ、何不自由ないお金持ちの王様でも幸せになれないのではないでしょうか。

最近はそんなことを思いつつ、もっとシンプルに生きてゆけたらと願うようになりました。
本当に必要な知識ってそんなに沢山はなさそうだし、そういう心持ちで暮らしていると、必要な情報だけが向こうから飛び込んで来る気もします。

詩人まどみちおは齢100歳になるよぼよぼのじいさんですが、散歩の途中に道端で見かけるような恵みや驚きを、稲妻のような感受性で切り出して、我々に提示し続けてくれる達人です。

元々童謡の作詞家なので、幼児向けのリズミカルな言葉遊びっぽい作品が多く、大抵やさしい言葉で綴られていますが、はっとさせられるような発見やこの宇宙の謎を解き明かすような言葉、一撃で人生観を変える力強い啓示に満ちていてすごいです。

説明しても分かりにくいので、一つだけここに上げておきましょう。

「根」

ない

今が今 これらの草や木を
草として
木として
こんなに栄えさせてくれている
その肝心なものの姿が

どうして ないのだろう
と 気がつくこともできないほどに
あっけらかんと

こんなにして消えているのか
人間の視界からは
いつも肝心かなめのものが


ね。すごいですよね。
とても真摯な姿勢で世界を見ながら生きてるんです。

そんな素敵な詩人の全詩集(735ページ!)、他エッセイ2冊を書棚の左から3列目、上から3段目、詩集のボックスに、新入荷しましたので、興味のある方は是非触れてみて下さい。
心が洗われますよ。


さて、現在店内ギャラリーコーナーにはコラージュ作品&アクセサリーが飾られています。
故人の魂を送り出すレクイエムをテーマに、ヨーロピアン・アンティークの装飾品やそれらを題材にしたコラージュ作品、オリジナルアクセサリーなどを展示中。

Requiem 知紅個展
現在展示中〜2/14(火)まで

箱の中に時間を閉じ込めたような厳かな雰囲気の作品が目を引きます。
是非お茶を飲みがてら、静かな鎮魂歌と古い異国の空気をご覧になって下さい。
category:2012 | by:アール座読書館 | - | - | -

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